サイエンス

「ワープドライブ」にはいつの日か実現の可能性があるという新たな研究


CERNが行った実験で、反物質も重力に従って落下することがわかり、物理学者から「ワープドライブ実現の最大の希望が消滅した」との指摘がありましたが、なおもワープドライブの実現可能性は残されているという新たな研究が発表されました。

Constant velocity physical warp drive solution - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6382/ad26aa


[2405.02709] Constant Velocity Physical Warp Drive Solution
https://arxiv.org/abs/2405.02709

'Warp drives' may actually be possible someday, new study suggests | Space
https://www.space.com/warp-drive-possibilities-positive-energy

Warp speed possible! Scientists discover loophole making faster-than-light travel achievable -
https://studyfinds.org/warp-speed-possible-loophole/

研究を行ったのはアメリカ・アラバマ大学のジャレド・フックス氏や研究シンクタンク・Applied Physicsなどで組織されたチームです。


ワープドライブを実現するためのアイデアとしては、物理学者のミゲル・アルクビエレ氏が提唱した「アルクビエレ・ドライブ」が挙げられます。

アインシュタインの一般相対性理論では、重力の効果を「時空の歪み」として捉えます。物質やエネルギーによって「正の歪み」を作りつつ、負の物質やエネルギーによって「負の歪み」を同時に作り出すことができれば、宇宙船前方の空間を圧縮しつつ宇宙船後方の空間を希薄化して、圧縮された空間内を「ワープ・バブル」に包まれた宇宙船が移動できる、というのが「アルクビエレ・ドライブ」の考え方です。このアルクビエレ・ドライブが実現した場合、光速以上の速度で移動できると考えられます。

しかし、問題は「負の歪み」を作り出すための、負のエネルギーを持つ「エキゾチック物質」が必要である点です。真空の中でも「真空エネルギー」という正のエネルギーが存在するように、既知の物理法則ではワープ・ドライブを実現するだけの負のエネルギーは存在しません。

そこでフックス氏らは、アルクビエレ・ドライブのことはいったん置いておいて、「既知の物理法則に従いつつ、光速より速く移動できる時空幾何学とは?」について再考し、「通常物質で作られた殻」でワープ・バブルを作ることができるという結論に至ったとのこと。


アルクビエレ・ドライブとの違いは、「殻」は正のエネルギー密度を持つものであり、エキゾチック物質などによる負のエネルギー密度を必要としないという点です。

フックス氏らの考案したワープ・ドライブの場合、一般相対性理論の既知のエネルギー条件をすべて満たすことが数学的に示されているとのこと。

ただし、この「殻」は、現代の人類の技術では到底作れるものではなく、ワープを実現するのに必要な質量は太陽を上回るそうです。また、研究では光速より遅い速度のワープ・ドライブの事例しか調査されておらず、光速以上まで加速するには未解決課題があると指摘されています。


フックス氏は研究について、あくまで「効率的な恒星間航行への長い道のりの足がかりになる可能性になるもの」と述べました。

また、Applied Physicsのジャンニ・マルティーレCEOは「我々はまだ恒星間航行の準備をしたわけではありませんが、この研究は、可能性の新たな時代を告げるものです。人類がワープの時代に乗り出すために、着実な進歩を続けています」とコメントしています。

なお、エキゾチック物質を用いないワープドライブとしては、2021年にエリック・W・レンツ氏が「ソリトン」を用いるアプローチを提示しています。

[2201.00652] Hyper-Fast Positive Energy Warp Drives
https://arxiv.org/abs/2201.00652

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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